須藤 美沙 個展「巡りゆく星たち」

Misa Sudo Solo Exhibition “The stars that go around” 

Date: 2022.6.30(Thu)-7.24(Sun)

SYP GALLERY 

コラボレーター:特殊照明作家 市川 平 

photo: 加藤 健 

©️Misa Sudo  

©️Misa Sudo  

©️Misa Sudo  

©️Misa Sudo  

©️Misa Sudo  

  遥か彼方の宇宙が身近に感じられるようになった現代において、須藤は8年前から宇宙の画像や天文に関する事物をモチーフに、遠くにあって身体的に感得し難い宇宙空間を表現しようと作品を制作してきました。NASAのハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像に見られる、美しい銀河や星雲に魅了されたことから出発し、宇宙望遠鏡による科学観測や地学的教養、神話にも関心を寄せています。作品の主な表現方法は、紙にピンで穴をあけ、その画面上に無数の星々や銀河、惑星などの図像を浮かび上がらせます。画面上に光を照らして陰影を強調させ、目に見えない宇宙の光をあらわそうと試み、作品に立体感や質感を与えています。須藤自身は宇宙の造形美を観察し、作品制作を通して宇宙との距離を縮めていると考えています。

  本展では、土星や木星などの惑星や月の裏側を描いた作品に旋回する光を照らし、それらの固定されたビジュアルイメージに変化を与えてさまざまな表情を生み出します。この見かけの変化は星の公転運動を想像させ、地球と星との関係性やその存在について私たちに考察を促します。また、メダル型のギリシャ神話の神をモチーフにした作品では、画面の表裏それぞれに同じ図像を描くことによって、「善と悪」のような二項対立と、その二つの間にある曖昧で揺れ動く部分や摩擦について表現しています。


For the past eight years, Sudo has been creating works using images of the universe and astronomical objects as motifs in an attempt to express the distant and physically inaccessible space. She is also interested in scientific observation through space telescopes, geological education and mythology. The main method of expression in her works is to poke holes in paper with pins making appear countless stars, galaxies, planets and other images . She shines light on the screen to emphasize the shadows and attempts to show the invisible light of the universe giving the work a three-dimensional feel and texture. Sudo herself observes the beauty of the cosmic formations and believes that she is shortening the distance between herself and the universe through the process.

In this exhibition, she illuminates her works depicting planets such as Saturn and Jupiter, as well as the underside of the moon with circling light, changing their fixed visual images to create a different expression of their appearance. These variations evoke the orbital motion of the stars, prompting us to consider the relationship between the earth and the stars and their existence. In a medallion-shaped work based on a Greek mythological god, the same image is painted on both sides of the screen to express a dichotomy as “good and evil” and the ambiguity and friction that lies between the two of them.

■出品作品について(作家コメント)

 1. Medal(muse Urania) 2021 paper(star dream -FS) 25×25cm

メダルに見立てたシリーズの1作目。表裏それぞれに同じ図像を穴をあけて描くと、どちらの面も表で裏のようになる。表だけでなく、裏側の目に見えないものについても感じられるように表現した。絵のモチーフは天文を司るギリシャ神話の女神ウラニア。文芸の女神ムーサイのひとりで、未来予知が得意で直感力もある。

 

 2. Medal(Apollon) 2021 paper(star dream -FS) 24.5x24.5cm

モチーフはギリシャ神話のアポロン。アポロンは詩歌や音楽などの芸術の神として有名だけれど、この神様も色な顔を持っている。地上に向かって放った矢から疫病を広め、人々の命を奪う。そんな怖い面がある一方で、病を払う治療の神の性格を持つ。表と裏の顔、表裏一体。

3. Medal(Nike) 2022 paper(star dream -FS) 23×23cm

勝利の女神ニケをモチーフに、表裏それぞれに同じ図像を描くと、表裏の女神たちが腕を組み目を合わせているような格好に。勝負事には闘うもの同士、互いにリスペクトがあってほしい。今回は自身の個人的な挑戦やオリンピックから刺激を受けて作品を制作した。 オリンピックが終わって間もなく、ロシアがウクライナに侵攻。受け入れ難く悲しい現実。

 

4. Medal(Athena) 2022 paper(star dream -FS) 25.5x25.5cm

モチーフは戦いと守護、知恵、工芸の女神アテナ。彼女は戦う英雄たちを導き守ってくれる。またこの女神が持つ盾にはメドゥーサの顔が描かれ、邪悪や災厄を払う魔除けの力があると言われている。

5. Medal(Psychē) 2022 paper(star dream -FS) 18.6x18.6cm
愛の神キューピッドとバタフライ星雲(NGC 6302)を表裏それぞれから描いた。バタフライ星雲はハッブルがとらえた画像を元にしている。 中央から摂氏2万度の熱いガスを放出、その姿がまるで蝶の羽のよう。キューピッドは蝶、魂の意味を持つ人間プシュケーと夫婦となり、妻は 困難を乗り越え女神となるというエピソードがある。

6. Medal(Eilene) 2022 paper(star dream -FS) 24.3x24.3cm

モチーフは平和を司る女神エイレーネー。このメダルを反対側に返し続けてもエンドレスに平和の象徴が見えるように、永遠に戦争の無い状態、 平和であってほしいと願う。表裏の図像が重なる部分は表裏どちらの形も表していて曖昧になる。二項対立の間にある揺れ動く部分や摩擦につ いても考えてみる。

7. Medal(Aphrodite) 2022 paper(star dream -FS) 17.6x18.8cm

モチーフは愛と美を司るギリシャ神話の女神アフロディーテ。ローマ神話のヴィーナス、金星を意味する。アフロディーテが誕生し裸のまま島 に上陸すると、足が触れた地面から草や花が芽生えたという。愛の反対は憎しみ。身近な人に対して愛憎の感情が入り交じることはあるなと思 うけど、あらためて憎しみに囚われてはならないと思う。

 

8. Medal(Melpomene) 2022 paper(star dream -FS) 22.6x17.2cm

モチーフは文芸の女神ムーサイのひとりで、悲劇と挽歌を司るギリシャ神話の女神メルポメネー。物語のアンハッ   ピーな結末に、ときに反発し たくなるけれど、その悲しみに沈んで心地良くなることも物語を超えて現実世界の事まで憂いてしまうこともある。悲劇と喜劇。

9. Medal(Artemis) 2022 paper(star dream -FS) 18.4x18.7cm

モチーフは月の表側と、狩猟、月の女神アルテミス。アルテミスはこのシリーズに以前登場したアポロンと双子である。ふたりは同じ能力を備え、疫病を広めて人々の命を奪う一方で病を払いもする。NASAのアルテミス計画はこの女神の名前から。2024年には多くの女性宇宙飛行士を 月へ送り込むようである(あと2年?)。女性は光を受けて輝き、自ら光を放つ時代である。

10. Jupiter 2020-2022 paper(star dream -FS) 72.0x102cm

じんわりと浮かぶ木星。眼のような大赤斑と縞模様が独特で美しい。木星は水素やヘリウム、メタン、アンモニアなどでできたガス惑星と呼ばれ、その表面は分厚い雲で覆われている。表に見える縞模様は速い自転運動と大気中のながれによってできている。

11. Saturn 2020 paper(star dream -FS) 72.0x102cm

たくさんの細い環が連なる土星の環。秩序があって圧倒的である。だが、実際の円盤は大きさの異なる氷片や岩でできていて高速移動しているという。モチーフは2020年7月4日ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像の一部。このとき地球から13億5千万km離れている。

12. Saturn 2021 paper(star dream -FS) 72.0x102cm

2020年に制作した「Saturn」のシリーズで、前作よりも環の質感やミクロとマクロの世界をより意識して穴をあけて描いた。穴をあける時ブレが生じ、近くで見るとバラバラで不揃いであるが、遠くで見ると規則正しく並んで見える。環の手触りを感じる。 土星は惑星の一つ。惑星(planet)の語源はさまよう人(planetai)。地球から見るとふらふらと惑い移動して見えることから。

13. Moon(the Crater Daedalus) 2021 paper(star dream -FS) 53x54cm

月の裏側にあって地球からは見えないクレーターダイダロス。1969年のアポロ11号が月面着陸に成功した時に、月の裏側のクレーターも撮 影された。中国の月面探査機が月面着陸、NASA主導のアルテミス計画が気になる。人類の月への挑戦は続く。

14. Lunar Orbital Platform-Gateway 2022 paper(star dream -FS) 50cmΦ

月の裏側、クレーターダイダロスをモチーフに制作をした作品から展開した作品。現在、NASAは月面探査プログラムアルテミス計画を提案 している。月を回る軌道に新しい宇宙ステーション「月軌道プラットフォーム・ゲートウェイ」(通称 ゲートウェイ)を建設する構想があり、2024年には月に人類を送るようである。ゲートウェイは、ISSのようにモジュールを複数回に分けて打ち上げられ、月を回る軌道でドッ キングして建設され、月面や火星への中継基地としての利用が期待されている。 2024年まであと2年。少し先の未来。これからの未来を想うことにはワクワクしたい。

15. Blind(The cluster Westerlund 2 in the Milky Way) 2021 paper(star dream -FS) 58x91x3.8cm

ロールブラインドに見立てた作品。ブラインドは光を遮断し、外界を見えなくする。そうすることで見えてくる事もある。この画面に浮かび上がる図像は天の川銀河の中にあって地球から20000光年離れた所に存在する、沢山の若い星が集まるスタークラスター。目には見えない宇 宙の光も描かれている。

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